初 級 編 (パート5)

4. 宝石としてのオパール

前章までは、オパールの本質や種類など、ちょっと理科系的なお話だったので、ここらで宝飾品、宝石としてのオパールについて話をさせていただこうと思います。

オパールが歴史に登場するのは、はるか古代ローマ時代にまでさかのぼります。その頃の皇族や、将軍たちはこよなくオパールを愛したとされています。なかでも将軍マルクス・アントニウスがクレオパトラにオパールを贈るため、元老議員ノニウスが持っていたオパールの指輪を買い取ろうとして拒否され、ノニウスを国外追放処分にしてしまったお話は有名です(この頃のオパールは、ほとんどがハンガリー産だったとされています)。
このように、オパールは、はるか昔からヨーロッパの貴族、王族たちに愛され続けてきました。こうした貴族たちの中でも、イギリスのビクトリア女王は常にオパールを身に着けていたと言われるほど、この宝石を愛していたようです。オーストラリアは長い間イギリスの植民地であったことから、イギリス王室が、最も良質のブラックオパールのコレクションを所有していると言われています。

通常、オパールはカボションカットと呼ばれるドーム型に研磨され、皆さんの目に触れるのですが、前章でお話したとおり、中にはボルダーオパールのように、フリーシェープと言われる個性的な形で宝石となるものもあります。また、メキシコオパールなどでたまに見かけられるステップカットやブリリアントカットの石は、遊色効果が出ない原石を地色のみで楽しもうとしてカットされたもので、オパールとしての価値はぐっと下がることになります。

どのタイプのオパールでも地色に曇りが無く、遊色効果が鮮やかなものほど価値は高くなっていきます。中でもブラックオパールやボルダーオパールの場合、その色により価値に違いが現れ、赤・オレンジが最も高く、続いてイエロー、ブルー、紫とされています。これは単純に、赤が最も採れにくく、紫の石が一番多く採れるということです。次に実際の遊色効果の出方による違いがあげられます。石のほんの一部分にのみ遊色が出るものよりは、全体にわたって色の変化のあるものの方が高価値とされます。

ブラックオパールルースブラックオパール裸石

上のふたつの石は、その値段に約10倍の開きがあります。どちらがより価値の高いものかわかりますか? ここまでがんばって読んでくださった皆さんなら簡単ですね。もちろん右側です。地色の濃さと、遊色の強さ、それにそのドラマチックさは間違いなく右の石のほうが優れています。実際お見せしてご説明できないのが残念なのですが、右の石は“フラッシュ”と呼ばれる遊色効果パターンを持っていて、本当に強烈な個性を発揮しています。ここでお話に出てきた遊色効果のパターンによっても価値は変わってきます。遊色効果のパターンについては『上 級 編 』でもう少しお話しようと思います。

ここまで、オパールの価値の基準は、地色、遊色の色合い、そしてそのパターンとあげてきましたが、もちろん宝石ですから大きさも考えなくてはなりません。普通、ダイヤモンドなど一般的な宝石はカラットで、つまり重さでその大きさを表現することが多いのですが、オパールの場合、特にボルダーやブラックオパールの場合は一概にカラット表現だけでは判断しきれないところがあります。なぜでしょう? そう、母岩が一緒に研磨されてひとつの宝石となっているからです(重さを重くしたいのであれば、極端な話、裏の母岩を多く残して研磨すればよいのですから)。もちろん、私たちも取引の時などはカラットで表現しますが、やはり石の面、つまり表面から見た大きさが重要になってきます。そして最後に、石の表面に母岩が露出していないかも重要な判断材料になってきます。

ブラックもボルダーも必ずといってよいほど、砂や母岩が内包物として石の中に残っています。でも、これは天然の証、作りものではない証拠ですので、よほどその内包物が色や遊色効果のさまたげになっていなければ、深く考える必要はありません。かえって何も内包物のない石は、疑ってかかった方がよいと思います。最近では、かなり精巧に作られたイミテーションや加工品が出回っていますので注意が必要です。より詳しいことは、『上 級 編 』でお話しすることとして、オパールの一番の魅力は、何といっても色のコンビネーションと遊色効果にあります。やはりいろいろな角度から見たり、手に乗せて揺らしてみたりしなければ、その価値判断は難しいでしょう。

※ブラックオパールの価値を決める基準

よく耳にするのが、「オパールは弱い」とか、「割れやすい」とか、「たまに水につけてあげなくちゃいけない」なんて言葉です。たしかにダイヤモンドに比べたら傷が付きやすいのは否定できません。よくご存知の宝石の硬さを表す硬度で比べると、ダイヤモンドが10でオパールは6前後です。この硬度の表現の仕方にも問題はあるのですが、それはまた別の機会にゆずって、硬度10のダイヤモンドだって割れることがあるんです。この硬度(一般にモース硬度と呼ばれます)は、単純に宝石同士をこすりつけた時に出来る傷の付きやすさを順番で表現したもので、割れやすさとはまったく別次元なのです。オパールとほぼ同じ硬度6.5のエメラルドは、その性質上、オパールよりもずっと割れやすい宝石です。その辺で、誤解が誤解を招き、正確な情報を一般消費者の方にお伝えできなかったのは、私達、宝石にたずさわる者の責任であったと反省しています。
また「水につけてあげる・・・」ですが、確かにオパールには水分が含まれています。しかしこの水分が蒸発して(あるいは抜けて)しまうので、それを補ってやるなんてことは正しい考え方ではないと思います。おそらく、今から数十年前、日本でブームになったメキシコオパールで、ブームに乗った一部の業者が販売したものの中に、極端に水分量の多いものが混ざっていたか、あるいは最初からヒビ(クラックと言います)のある石が多く入っていたのだと思います。メキシコオパールの水分含有量は、約12%くらいとされ、数字で聞くとビックリしてしまいますが、これを全てオパールから抜くには相当の乾燥状態が必要だと思います。ブラックやボルダーなどのオパールは、メキシコ産に比べ、その水分含有量が少なく、約6%前後と言われています。これらオパールが採れるのはオーストラリアの砂漠地帯です。こんなに乾燥したところで、長い時間かけて形作られたオパールがどうして乾燥に弱く、割れてしまうのでしょう。少なくとも日本のような多湿な場所では、どう考えてもありえないことではないでしょうか。割れるとしても何かほかに原因があるのではないかと考えられます。
少し興奮しすぎました。どうも自分の大好きな人をけなされている様で、ついつい。申し訳ありません。
オパールを電子レンジに入れて加熱したことがあります。3分加熱してもその石は割れるどころか、何の変化も見られませんでした。この方法は皆さんにはおすすめしませんが、私の主張と思っていただければ幸いです。

※ 電子レンジ実験の詳細はこちらでご紹介しております。

最後は少しソフトなお話でこの章を閉じたいと思います。

オパールは10月の誕生石ということは知ってらっしゃる方も多いと思いますが、それ以外に、さそり座の守護石でもあります。宝石言葉は「幸福」、「希望」です。ヨーロッパでは「キューピットストーン」などとも呼ばれています。

※ 誕生石・パワーストーンとしてのオパール

それでは最後にまとめへどうぞ。

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