上 級 編 (パート3)

4. ブラックオパールの定義について

初級編でブラックオパールを、「地色が黒またはグレーの遊色効果を持つ」オパールと定義しましたが、実際、オパールを扱う業者、あるいは国によってはまちまちなところがあります。狭い意味でのブラックオパールは、「ライトニングリッジで採掘される 、濃い地色を持つ」オパールといったところが妥当なんだと思います。日本の宝石店、あるいはデパートなどでは、時おりボルダーオパールを"クイーンズランド ブラックオパール"なんて呼んだりもします。つまり、クイーンズランド州で採掘されるブラックオパールということで、これ自体は決して間違っているとはいえないのですが、このあたりの定義づけが、まだまだ曖昧なところです。ダイヤモンドのように多くの採掘量があり、たくさんの人達が知っている宝石とは違い、やはりその希少性からきた状況なのだと考えています。

宝石を鑑別(種類を見分ける)する機関によっても定義が違ったりしているのが現状のようです。例えば、日本のある鑑別機関では、石の裏面に黒い母岩(ポッチ)が付いていないとブラックとしない、そんなところもあります。どんなに発色が強く、地色が濃い、オパール層が厚いものでも黒い母岩の付いていない石は、ブラックオパールとはしないようです。これは日本のこの機関だけの特別なことです。

ちなみに私たちは、

1.ライトニングリッジで産出されたものであること
2.地色が黒、あるいはグレーであること

このふたつの点を基準に考えています。

5. 人工オパール

はり合わせのオパールについては、『賢い選び方』でご紹介していますが、それ以外にも人工的に作られるオパールがありますので、そのお話をしたいと思います。

有名なものに"ギルソンオパール"があります。これはフランス人のピエール・ギルソンという人が作り出した人工ブラックオパールなのですが、その色合いは、まさしく本物そっくりです。よほどオパールを見慣れている人ではないと見分けることは難しく、なかなか厄介な代物です。ただ、これはなにも皆さんをだます目的で作られたわけではないので、不当にこれを売りつけられたという話はあまり聞いたことがありません。しかし、注意は必要でしょう。見分けるには、ルーペを使って石を見ると、斑の境目が天然のオパールと比べ、スムースでなく、モザイクのようになっているのが特徴("Lizard Skin"トカゲの肌と呼ばれます)です。このギルソンオパール以外にも、"スローカムストーン"と呼ばれるものや、ポリスチレンで作られたものなど、様々なものがあります。やはりお求めの際は、信用のおけるお店で、ということでしょう。

ギルソンオパール
ギルソンオパール

マーケットに再結晶オパールとして流通している人工オパールも、とてもポピュラーになっています。板状の塊でも購入することができるため、宝飾品として以外にも印鑑を作ったり造形物を製作するなど様々な利用方法があります。様々な色合いがありますが、特徴的な縦の柱状構造(柱状構造)で天然オパールと見分けることができます。

ハイブリッドオパールハイブリッドオパール
合成オパール

もうひとつ"エンハンスメント(改良)"についてここでお話しておこうと思います。
エンハンスメントとは、「本来その宝石が持っている特徴を、人の手で引き出してやる」行為をさします。 俗に"トリートメント(改変)"といわれる宝石自体の性質を、化学的あるいは物理的に変化させて、色をつけたりする方法と違い、宝石自体の性質をうまく利用して、より美しいものにする行為です。女性の皆さんの非難を承知で、あえて例えると、エンハンスメントはお化粧、トリートメントは整形手術といったところでしょうか。つまり、トリートメントは天然の宝石とはみなされず、価値はずっと下がってしまいますが、エンハンスメントは天然石とみなされます。ほとんどの色石、例えばルビーやサファイア、アクアマリンなどは、原石の段階で加熱処理され、より美しい色を出すようエンハンスメント(お化粧)されています。一方、トリートメントのポピュラーなものは、放射線で処理をすることにより、通常の白い(透明な)ダイヤモンドをブルーに色付けしたり、無色サファイアの表面に色付けして、ブルーのサファイアにするなどがあげられます。こうしてトリートメントされた宝石は、もはや天然とは言えず、"処理石"として扱われ、鑑別書にもその旨が明記されます。
それではオパールの場合はどうでしょうか。白いホワイトオパールやメキシコオパールを加熱処理したり、化学処理してブラックのような濃い色合いにするトリートメントがなされている場合を時々見かけます。しかし、これは見た感じが天然のブラックオパールとはやはり違い、容易に見分けることが出来ると思います。一方、エンハンスメントの例としては、ブラックオパールの透明感の強いものを、金などで裏打ちして指輪やペンダントに加工し、より美しい色が発色するようにしたものがあります。もちろんこれらは、宝石自体の性質を変えているわけではないので天然石とみなされます。より美しいオパールを、比較的お手ごろにお求めいただけるものとして、ポピュラーな方法になりつつあります。もちろん販売する店側は、必ずエンハンスメントされている旨を、お客様にお伝えしなければならないと思いますし、私たちもそのようにご説明しています。

最近(2012年)エチオピア産オパールを処理し、地色を濃くすることで、ブラックオパールに見せかけ、ライトニングリッジ産として販売されているのが見受けられます。地色など表情はライトニングリッジ産と似ていますが、ポッチが付いていないこと、そして極端に透明感が高いことから判別する事が出来ます。

エチオピア産オパールについては、ブログの記事をご参考にしてください。

エチオピア産オパールのハイドロフェン効果

オパールを食紅で染めてみる

エチオピア産オパールを電子レンジへ

6. まとめ

ここまで読み進んでくださってありがとうございます。少しは皆さんのお役に立ったでしょうか。宝石、特にブラックオパールやボルダーオパールのように希少性の高いものは、なかなか見比べることが難しいものです。ここにお話したことも、オパールを目の前にして、ゆっくり皆さんにお話できればもっと簡単にご納得いただけるものと思います。オーストラリアはオパールを国の宝石として、世界中にアピールしています。この美しい、大切な宝石のことを、そしてオーストラリアのことを、少しでも多くの方にご紹介するお手伝いになればと思い、お話してきました。
文責はすべて私たちにあります。ご不明なところ、「ここちょっと違うんじゃないの」なんてご指摘、お待ちしてます。お気軽にご連絡いただければと思います。

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